7月の記念日ご飯に思うこと
7月の記念日 お出かけご飯。綴ろうか綴るまいか。
思うことあって、いつも通りに記せない。
ナツキくんの成長日記もずっとご無沙汰のまま
もう何日もパソコンに向かって記し、消し。
悩みながら、結局また閉じる。
私達のとっておきのお店。
ナツキくんのお宮参りの御祝という名目にかこつけて
タカコさんと私の誕生日のお祝いも兼ねて出掛けてきた。
ご主人も女将さんも気さくで温かい。
勝手に推測させていただくと、お二方のお人柄は真逆のようで。
女将さんが竹を割ったような方と表現するなら
ご主人はどこか女性的な繊細な部分もありつつ一本気。
職人らしく頑固な面を持つ人、かな。
だからこそ、あんなに手の込んだ仕事が出来るのだろう。
初めて出かけて以来、ご縁は早いものでもう3年になる。
これまで思い出に残る時間を過ごさせて頂いてきた。
年老いて、好きだったものも美味しく感じないというタカコさん。
いつも「勿体ない」が口癖。
こちらの1人分の御代金は、家族全員のちょっとした定食分くらい出てしまうお代だけど。
記念日に出掛けるならこのお店がいいと言う。
こちらに行けば他では味わえないものが戴けるという好奇心と欲求は抑えられない。
予約した日を待つ時間は、まるで遠足を控えた子供のよう。
いつ出かけても特別な気分をくれる。
このお店との出会いは私達にとっては宝物。
文月のお献立はとにかく涼やかで日本食の美を感じさせる。
紫陽花が咲いたように見える赤紫蘇酢のジュレや
グラスに入った胡瓜のところてん、鬼灯やすだちを器に。
ひとつひとつが宝石のようにきらきらと、彩りも豊かで見た瞬間に感動に包まれる。
鱧 木の芽焼き 餅米の薄葛仕立て
優しくて身体や心に沁みる。
一番初めに感動した、あのお味を思い出させる。
瑠璃色のお皿に鱧や白身のお造り
黄色のキンギョソウ、笹の緑。
赤が足りないと、遊び心で精進料理でも作られるマグロに見せたのはトマト。
玉蜀黍豆腐の揚げ出し
添えられた大葉の新芽に、そんなものがあったのか!と。
甘い甘いとうもろこしが豆腐に変身。
おススメだけのことはある。
この一切れだけでは物足りない、お替わりください!と皆、思う。
県のブランド魚でもある福井サーモンを昆布〆にしてねかせて
時間をかけて、また昆布で〆て(と、仰っていらした記憶)
福井サーモンのおかき揚げ
夏野菜のジュレ蕎麦やデザートのあんみつなど。
「蒸し暑く、食が進まない頃なので喉越しよく食べて頂けるように」と
いつもながら、ご主人のお心遣い。
このお料理を前にしたら、食が進まないどころか、
どんどんお腹が減ってきて、もっともっとと戴きたくなる。
一品一品に隠された食材探しは、まるで秀逸な謎欠けのよう。
是非その謎を解き明かして日々のお食事に活かしたい、
口に含みながら、これは何だろう?と会話が進む。
「普通に食べないで、その味を盗め。自分でも取り入れられるよう戴くもんだ」
考えながら食べろ。
お食事に出かけるたび、父がよく言っていたことを思い出す。
ご主人は1席1席の準備にどれほどの時間を費やしただろう?
ひとつひとつの仕事に打ち込む姿が目に浮かぶ。
暑い時期に喉越しよく、滋養になるように。
「お客様を驚かせたい、喜んでいただきたい」
そんな気持ちのこもったお料理は、いつものように大好評で感嘆させられた。
ただ今回は、これまでと若干違う会話も出た。
3年前に初めて出会った際のお料理より、ずっとずっと繊細で美しくて優しくて、より美味しい。
それほど素晴らしいお献立で、頭の中の満腹中枢は刺激されているのに
胃袋が満たされない。
小食で子供用のお食事ですら完食出来ない時がある私が、腹八分目にもならなかった。
タカコさんですら足りないというので、
25歳の青年や大食漢のマリエさんはもう2コースでも食べられるという。
それなら1ランク上のコースをお願いすればいいのだろうけど。
もしこのコースを注文されて、
同じような思いをされていらっしゃる方がいたとしたら。
「すごく美味しいけど、お腹ふくれないね」なんて思われやしないだろうか。
大きなお世話、余計なお節介。
でも本音を書くことをお許しいただけるのであれば。
そして、こんなにご縁を感じるお店でないなら、知らんぷりしてリピーターにはならないかも。
でも、今はお料理だけでなく人も場所も大好きと思えるお店だから。
伝えたいことがある。
一昨年の祇園祭に出かけた際
京都の伯母にご馳走になった京都駅直結 伊勢丹8階にある加賀屋さん。
たしか4,000円台だったコース料理。
お出しが効いて上品なお味。
こちらも少しずつ盛られたお料理だったけど
最後にしっかりご飯など戴いて満腹になった。
ご主人が作って下さるお料理の方が手が込んでいて美味しいのに。
たまにブログを読んで下さるというご主人。
もし、このページお読みになったとしたらどうお感じになられるだろう。
申し訳ないから止めたら?
家庭内会議が繰り広げられ、私とマリエさんの意見は同じ。
例えば、小さな一切れを倍の大きさでご提供いただくなり。
どれか1品だけでも、3年前のようなドンとしたお料理にしていただくなり。
あるいは、なんの飾り気もない白米を出していただくだけでも幸福感は全然違うと思う。
私達も物を作る仕事人。
マリエさんはデザイナーであり、クリエイター、職人。
オリジナリティを重要視し、自分の世界観を持っている。
きっとご主人も同じはずで、横槍なんて入れられたくないはず。
それまでわかっているのなら書かなきゃいいのに。
でも・・・と、悩み始めて10日間。
特別なお店だからこそ
万が一でも、他のお客様に同じ思いをしてほしくない。
ぜひまた「親しい人をお連れしたい」と思えたあの瞬間のような高揚感を心より願う。
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